武骨な人間の、一途な挑戦

福山春男さん

「先月は4日しか、休みがなかったもんなあ」。
うれしいような困ったような顔で笑いながら、福山春男さんは言いました。

ここは、熊本県葦北郡津奈木町にある、福浦(ふくうら)という地域。家の中でも潮の香りがするほどに、海が近い集落です。
目の前には広がる海、背後には急斜面のみかん山。海にも山にも恵まれた土地で暮らす春男さんは、ここでしらぬいを育てるきばるの生産者であり、また同時に、漁師でもあります。
今年は、山も海も、当たり年。春男さんも、漁の人手が足りずに引っ張りだこの日々でした。
「海に出とってもなあ・・・みかんが気になるのよ」と苦笑いしながら、たわわに実るしらぬいの樹を眺めます。「今年はよう生っとる」。

「しらぬいは、大変よ。よっぽど良いのを作らないと・・・お客さんも味に期待しとるから」。美味しくなければつまらん(ダメだ)と、自分に発破をかけ、手塩にかけて育ててきました。
お父さんの貞雄さんから園を継いで、5年。剪定は我流で、ほどよく風と光を入れることを意識し、樹をよく観察しながら世話をしていきます。

福山春男さんのしらぬい園

春男さんは今、昔植えた新甘夏の樹を、積極的にしらぬいへと切り替えています。管理の難しいしらぬいに情熱を注ぐのは、なぜ?と聞くと、ニヤッと不敵な笑みを浮かべてひと言、「作りがいがあるけん」。
一見そっけないけれど、想いは人一倍。愛情の深い生産者です。
「しらぬいは親の残した財産。あとは、自分がどこまでできるか、よ」。

そう言えば、この海の名もまた『不知火(しらぬい)海』。
春男さんは今日も、山と海の『しらぬい』に向かいます。