みかん山から―2017/6/7

みかん山から2017年6月7日

例年と比べれば雨の少なかった5月が過ぎ、6月に入りました。乾燥に弱い「しらぬい」は、そろそろ水が欲しいと葉を黄色くしながら訴えています。そんなタイミングで熊本県が梅雨入りしました。ここらでひとつ、しっかりと雨を降らせてもらって、樹々の成長を促していただきたい。そう思っています。

甘夏園はというと……甘夏は元気ですが、高橋さんの元気がありません(笑)。
いや、笑いごとではありませんね。私も何と声をかけたらよいかわからず、一緒に落ち込んでいます。というのも、今年の(高橋個人の)甘夏出荷量が過去最低を記録し、無農薬栽培の実践6年目にして、改めてその厳しさを感じているから……だと思われます。
その原因のひとつが、昨年私が行った大胆な剪定にあるということも自覚しているので、さらに何も言えず……。

ただひとつ救いだったのは、今年は「今までで一番美味しかった!」と言ってくださるお客様がいたくらい、美味しい甘夏ができた年でもあったこと。けれども、収量がなくては収入につながりませんので、経営者としては失格です。
余計なことをしてしまったと反省し、私は今年、まったくと言っていいほど、剪定をしていません。高橋さんも病気にかかった秋芽を切るだけで、剪定はほとんどしておられません。
その結果ですが、今のところは春芽がよく出て、ほどよいバランスで実もついています。徒花(あだばな、無駄花ともいいます)が少なかったからかもしれません。このぶんだと、摘果も控えめになりそうです。

3月に植えた苗木には、5月に入ってから農薬を施しました。アブラムシやハモグリガ、ゴマダラカミキリ等の害虫被害予防のためにと思い、「アクタラ粒剤」を株もとに散布しています。「苗木が育つ前に芽を食われてしまって、全然大きくならない。その辺の対策を含めて改植を進めて欲しい」という生産者からの要望に応えるべく、作業負担が少なく、かつ効力を発揮する農薬はないものかと思い、試してみることにしました。水溶剤よりも、株もと散布の粒剤の方が、撒く手間が省けて吸引等による健康被害も少ないものと考え、粒剤を使用しています。
まったく農薬を撒かないものと、30g撒いたもの、50g撒いたものとで分けて、経過を観察しています。散布して3週間程が経過しましたが、無農薬のものと農薬を施したものとの間には、やはり明確な差が出ています。無農薬の方は新芽が食べ尽くされているものや、ハモグリガ(エカキムシ)による独特な足跡があるもの、またそれによって葉が弱り、くるりと巻き込んでいるといった状態が見られます。30g撒きと50g撒きとではさほど違いが認められないものの、どちらも食べられる芽はありつつ、大きくなる芽はしっかりと成長しているようです。

みかん山から2017年6月7日
アクタラを撒いた苗木。
みかん山から2017年6月7日
撒かなかったもの。

これまで農薬を撒く経験がほとんどなかった私。撒いてすぐ次の日に、株もとにあったアリの巣が全滅しているのを見て「これが農薬か……!」と、改めて農薬がもつ殺虫能力を実感しました。
しかも、今回使用している「アクタラ」は、主成分が「チアメトキサム」というネオニコチノイド系の農薬です。ヨーロッパでは「ミツバチへの影響が考えられる」として、一部で使用規制が行われている農薬を、なぜ私は使うのか。

きちんと自分の中でも考えがまとまっていないのですが、農業において農薬は必ずしも「悪」ではない、と私は思います。植物自身が生み出す「生物農薬」というものがあるように、植物は身を守るために農薬(のような成分を持つ武器)を必要としているからです。しかしながらその武器を植物から奪ったのは、誰か。甘い果実や柔らかい食感、えぐみやアクの少ない食べ物を追い求めた人間ではないでしょうか。
私を含めて、人間が「美味しい」と思えるものは、虫や鳥獣にとっても美味しく、それは自然の状態の植物としては(種子を遠くへ運んでもらうためにその実を食べてもらいやすくする、などの場合を除けば)あり得ない状態です。本来ならば自分の身は自分で守り、その生命の営みを子孫へと繋いでいくことができていた植物を「食べられてなんぼ」の状態に改良していったのは、私たちの望んだ結果とも言えます。現在、甘くて柔らかくて食べやすくって、美味しい作物をたくさん食べることができるのは、過去の人間のたゆまぬ努力があったからだと思います。それを支えてきた農薬や肥料を開発してきた人々、またその資材そのものを「悪」として一概にくくりたくない。
その恩恵を授かっているのは他でもない、私自身でもあるからです。

農薬に対する拒絶反応は私の中にもあるけれど、現在の農薬がどのようなものかを知らずに拒絶するのは、失礼だと思うようになりました。
ひるがえって、じゃあ理解した上で農薬や肥料をどんどん使っていくのかというと、私が目指すのは「無農薬・無肥料」栽培ですので全く逆です(笑)。「無農薬・無肥料」という理想を掲げながらも、現実をちゃんと見る。そしてたとえば、柑橘に限って言うと「丈夫な苗木を育てること」は必須条件であるため、最低限の農薬を苗木の段階で使うことは、致し方ないと判断する。これが今の私の考え方です。元気な成木になって欲しいので、液肥の葉面散布も試してみたいと思います。

今回、ネオニコチノイド系農薬を使うにあたって、色々調べる機会を得ることもできました。非常に複雑な問題であるために、多様な意見があって面白いし、それゆえ難しいです。すべての人が納得できるような解決はないのでしょうけれど、少なくともこのような現状があるということを生産者も消費者も知っていれば、では知った上で自分が何を選択するか、考えるきっかけとなるのではないかと思います。

私が参考にした意見はこちらです。「大事なのは、極力科学的に検証して不確実性がどこにあるかを明らかにし、代替策のリスクまで検討して包括的に対策を決める姿勢なのではないか」という松永さんの言葉、もっともだと思います。

【一般社団法人「Food Communication Compass」のサイト】
http://www.foocom.net/column/editor/10031/

以下のサイトを見ると、グリーンピースはネオニコチノイド系農薬について、とても精力的に取材されています。ただ、毒性評価については少し疑問を持ちました。(でも私の周りのオーガニック系の人には、こういう意見を持っておられる方が多いように感じます。)

【株式会社「インユー」のサイト】
http://macrobiotic-daisuki.jp/neonikotinoido-nouyaku-nihon-22274.html